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学習心理学用語:「認知負荷とは?認知システムへの負担と軽減法」

認知負荷とは、人間の認知能力の限界を超える情報の量や複雑さが引き起こす、認知システムへの負担を指し、認知心理学や教育心理学の分野で研究されている。認知負荷が高い状態では、情報の処理や学習が困難になる可能性があり、例えば、難解な専門用語や複雑な問題解決手順の説明を聞いた場合には認知負荷が高まる。認知負荷に注意しながら学習や教育を行うことで、情報の処理や学習が効率的に行えるようになり、学習効果を高めることにもつながる。

 

教養としての認知科学

 

1.【定義】
認知負荷(Cognitive Load)は、人間が情報を処理する際に生じる心のエネルギーやリソースの消費を指します。人間の認知能力は限られており、一度に多くの情報を処理することが難しいため、認知負荷が増加すると理解や学習が困難になります。

2.【カテゴリ】
認知心理学や教育心理学の分野で研究されている概念です。

3.【概要】

認知負荷は、主に以下の3つのタイプに分類されます。

内在的認知負荷(Intrinsic Cognitive Load): これは、学習対象となる情報や問題自体の難易度や複雑さによって生じる負荷です。個人の事前知識や経験によって、内在的認知負荷は異なります。

外生的認知負荷(Extraneous Cognitive Load): これは、学習環境や教材の設計によって生じる不必要な負荷です。情報の提示方法や、関連性の低い情報が含まれている場合に発生します。

ジャーマン認知負荷(Germane Cognitive Load): これは、学習者が新しい知識を構築するために必要な認知負荷です。このタイプの負荷は、学習者が知識を整理し、理解し、長期記憶に保存するのに役立ちます。

認知負荷理論は、教育や学習環境設計において重要な役割を果たします。適切な認知負荷を維持することで、学習者の理解や記憶力を向上させることができます。


4.【例】

例えば、ある学生が新しい数学の概念を学ぼうとしています。この場合、認知負荷の3つのタイプが次のように現れます。

内在的認知負荷: 学生が学ぶ新しい数学の概念自体の複雑さや難易度によって生じる負荷です。例えば、微積分は比例関係よりも複雑であり、内在的認知負荷が高くなります。

外生的認知負荷: 学習教材や教室環境によって生じる負荷です。例えば、教材が難解で説明が不十分だったり、教室内で大きな騒音があったりすると、学生の注意が分散し、理解が妨げられることがあります。

ジャーマン認知負荷: 数学の概念を理解し、関連する知識を組み立てるために必要な負荷です。例えば、学生が以前に習得した知識を使って新しい概念を理解し、それを長期記憶に統合するプロセスが含まれます。

この例で分かるように、内在的認知負荷とジャーマン認知負荷は学習の一部であり、適切な認知負荷を維持することが重要です。一方、外生的認知負荷はできるだけ減らすことが望ましいです。教材や環境を工夫して、学生が新しい概念を効果的に学べるようにすることが、教育者や学習環境設計者の目標です。


5.【関連用語】

認知負荷に関連する用語は以下の通りです。

認知心理学(Cognitive Psychology): 人間の知覚、記憶、思考、言語、意思決定など、認知プロセスに関する研究を行う心理学の分野です。

ワーキングメモリ(Working Memory): 短期的に情報を保持し、同時に処理する能力を指します。認知負荷はワーキングメモリの制約に影響されます。

長期記憶(Long-term Memory): 長期的に情報を保持する記憶領域です。認知負荷理論では、新しい知識を効果的に長期記憶に蓄積することが目標とされます。

スキーマ(Schema): 知識や経験を組織化し、構造化したメンタルモデルのことです。認知負荷理論では、スキーマを効果的に構築し、整理することが重要とされています。

デュアルコーディング理論(Dual Coding Theory): 言語情報と視覚情報が異なる記憶システムで処理されるとする理論です。認知負荷理論において、デュアルコーディング理論は学習環境や教材の設計において重要です。

マルチメディア学習(Multimedia Learning): テキスト、画像、音声、動画など、複数のメディアを利用した学習のことです。マルチメディア学習では、認知負荷を考慮して効果的な教材を設計することが重要です。

分散練習(Spaced Practice): 学習を一定期間に分散させることで、学習効果を向上させる方法です。認知負荷を適切に管理することで、分散練習が効果的に行えるとされています。

これらの用語は、認知負荷理論と関連し、学習環境や教育方法に影響を与える重要な概念です。


6.【適用/利点】
認知負荷に注意しながら学習や教育を行うことで、情報の処理や学習が効率的に行えるようになります。具体的には、情報の注目点を絞ったり、情報を分割して提示することで認知負荷を軽減することができます。また、認知負荷を軽減することは、学習効果を高めることにもつながります。

 

教材の最適化: 認知負荷理論を考慮して教材を設計することで、学習者が効果的に情報を理解し、記憶に統合できるようになります。

学習効果の向上: 内在的認知負荷とジャーマン認知負荷を適切に管理することで、学習者が新しい知識を効率的に習得し、長期記憶に蓄積できるようになります。

不必要な負荷の軽減: 外生的認知負荷を減らすことで、学習者の注意力が維持され、理解や記憶の妨げとなる要素が排除されます。

個別化された学習: 学習者の事前知識や経験に応じて、認知負荷を調整することが可能です。これにより、個々の学習者に合わせた最適な学習環境が提供できます。

マルチメディア学習の効果的活用: 認知負荷理論を適用することで、テキスト、画像、音声、動画などの異なるメディアを効果的に組み合わせた学習教材を作成できます。

モチベーション向上: 適切な認知負荷を維持することで、学習者が情報を効率的に処理できるため、学習に対するモチベーションが向上します。

一貫性のある教育環境: 認知負荷理論を学習環境全体に適用することで、教育の一貫性が保たれ、学習者が効果的に学べる環境が整備されます。